「祭司長、長老、律法学者たちが皆、集まって来た。」（14:53）
夜ふけに議会を開くためには、あらかじめ招集をかけておく必要があります。
このことからも、はかりごとの気配が漂います。
「死刑にするためイエスにとって不利な証言を求めた」（14:55）
法にしたがって裁判をおこなったという形を作ろうとしたのです。

「この男が、『わたしは人間の手で造ったこの神殿を打ち倒し、三日あれば、手で造らない別の神殿を建ててみせる』と言うのを、わたしたちは聞きました。」（14:58）
「人間の手で造った神殿」という言葉は、エルサレム神殿が竣工したときのソロモンの祈りにつながっています。
「神は果たして地上にお住まいになるでしょうか。天も、天の天もあなたをお納めすることができません。わたしが建てたこの神殿など、なおふさわしくありません。」（列王記上8:27）

天地を創造された神が、人間の手で造った神殿に住むはずがないことを、わたしは分かっています。
けれど、どうかあなたのお住まいである天にいまして耳を傾け、わたしたちの願いを聞き届けてください。
こう祈ったのです。

そもそも神殿とは何かという根本的な問いが、主イエスを陥れようとする言葉に隠されているのは、皮肉なことです。

真実の礼拝とは何かは、繰り返し語られています。
「もしいけにえがあなたに喜ばれ／焼き尽くす献げ物が御旨にかなうのなら／わたしはそれをささげます。しかし、神の求めるいけにえは打ち砕かれた霊。／打ち砕かれ悔いる心を／神よ、あなたは侮られません。」（詩編51:18～19）
「あなたがたの体は、･･･聖霊が宿ってくださる神殿で」ある。（Ⅰコリント6:19）

わたしたちの日々の行動が、みっともない部分を含めて丸ごと、神の働きのために用いられるのです。

「お前はほむべき方の子、メシアなのか」（14:61）
お前は、メシアだなどとうそ偽りを言って世間を騒がす、けしからん奴だ。
こう大祭司は詰問したのです。

「そうです。」（14:62）
ギリシア語で「エゴー・エイミー」、神ご自身がご自分を明らかにされる宣言です。
「わたしだ。わたしがメシアだ。わたしが神の子だ。」
そう宣言なさったのです。

大祭司の言葉と主イエスの言葉は、すれ違っています。
人間の知恵は、神の思いと隔たっているのです。

不当な裁きの場に引き出され、沈黙を守っておられた主イエスが、ひとたび口を開くとき、ご自分が神の子であると宣言なさった。
そして、人の姿をとって苦難を受けることが、神の御心であることを示されたのです。

（2017年10月8日）